日本ジェネティクスのテクニカルノートとは?
発売したばかりの新製品の性能評価や、既存製品の最適な条件を追求するための条件検討をすることでお客様に心からご納得頂いた上で商品をお使い頂けるよう、様々な評価試験を行っています。
採用前の検討資料として、または採用後の最適条件検討資料としてご活用ください。
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評価製品:
Franklin™ Real-Time PCR Thermocycler(Biomeme,Inc., Cat.No.1000003/SET)
唾液採取キット/ITM ウイルス不活化試薬入タイプ(日本ジェネティクス株式会社, Cat.No. SCK-2M-FT1/SP)
目的
唾液採取キット/ITM ウイルス不活化試薬入タイプを用いて採取したサンプルが、FranklinとTakara SARS-CoV-2 ダイレクトPCR検出キットを組み合わせて検出できるかを検証する。
実験概要
従来のウイルス不活化液には、PCRを強く阻害する成分が含まれており、核酸精製を行ってから使用するなど、検査の運用おいて、時間や手間を要していた。これに対して、今回検証した唾液採取キット/ITM ウイルス不活化試薬入タイプは、PCR阻害が生じにくいウイルス不活化試薬を含んだ唾液採取キットである。本キットを用いて採取した唾液検体は、核酸精製を行わなくてもPCRを行うことができると考えられるため、コスト・時間・手間を軽減できる利点があり、現在、SARS-CoV-2 遺伝子検査に使用され始めている。
また、SARS-CoV-2 遺伝子検査では、ベンチトップ型リアルタイムPCR装置を使用することが多かったが、検査をベッドサイドで行うなど、POCT(Point of care testing)の需要も高まってきている。このため、唾液採取キット/ITMウイルス不活化試薬入タイプを用いて採取した唾液検体が、モバイル型リアルタイムPCR装置FranklinとTakara SARS-CoV-2 ダイレクトPCR検出キットを組み合わせて検出できるかどうかを検証した。
実験条件
- 実験内容
実験1:Positive Control RNAを用いて1×104から1×101(copies/tube)までの希釈系列を作製し、検量線による定量性の評価を行った。
実験2:Positive Control RNA(50, 25, 5 copies/tube)を用いて検出感度の評価を行った。 - ウイルス不活化試薬
唾液採取キット/ITM ウイルス不活化試薬入タイプ(日本ジェネティクス株式会社, Cat.No. SCK-2M-FT1/SP)
採取した唾液検体とITM ウイルス不活化試薬を1:1で混合した。
- SARS-CoV-2 遺伝子検出キット
Takara SARS-CoV-2 ダイレクトPCR検出キット(タカラバイオ, Cat.No. RD001)
本キットを用いた操作方法は、巻末補足情報に記載
- Positive Control RNA
Takara SARS-CoV-2 Positive Control(RNA)(タカラバイオ, Cat.No. RC351A) - 使用装置
Franklin™ Real-Time PCR Thermocycler(以下Franklin)
- 反応条件
巻末補足情報に記載
Franklin™ Real-Time PCR Thermocycler
- 最大9サンプルまで同時測定が可能です。
- スマートフォンでのデータ取得・解析できるだけでなく、クラウドへのデータ転送が可能です。
- 最大3色(Green, Red, Amber)までフィルターの追加が可能です。
Biomeme Empty Go-Strips(3well / Void cap付き)
実験1:Positive Control RNAを用いた定量性の評価
評価方法
Positive Control RNAで希釈系列を1×104から1×101(copies/tube)まで4段階作製し、評価を行った。
Positive Control RNAの希釈系列は各n=2、Negative controlはn=1で実施した。
結果
増幅曲線

検量線

Cy5(SARS-CoV-2)のCq値
RNA | Cy5(SARS-CoV-2) |
---|---|
1×104 copies | 25.09 |
25.77 | |
1×103 copies | 29.63 |
28.77 | |
1×102 copies | 32.95 |
33.77 | |
1×101 copies | 36.03 |
35.92 | |
Negative Control | N.D. |
N.D. |
核酸精製を行わなくてもPCR阻害は生じず、精度の高い(R2≧0.98)検量線の作成が可能であった。
実験2:Positive Control RNAを用いた検出感度の評価
評価方法
Positive Control RNAを50, 25, 5 copies/tube となるように添加し、評価を行った。
Positive Control RNA, Negative Controlは各n=2で実施した。
結果
増幅曲線

Cy5(SARS-CoV-2)のCq値
RNA | Cy5(SARS-CoV-2) |
---|---|
50 copies | 33.42 |
33.15 | |
25 copies | 35.54 |
35.20 | |
5 copies | 37.41 |
38.22 | |
Negative Control | N.D. |
N.D. |
5 copies/tubeまで検出することが可能であった。
今回の検証では、唾液採取キット/ITM ウイルス不活化試薬入タイプに含まれるウイルス不活化試薬は、核酸精製を行わなくてもPCR阻害が生じることなく、FranklinとTakara SARS-CoV-2 ダイレクトPCR検出キットを組み合わせて使用できることが確認できた。
補足:操作方法

*マスターミックス組成
試薬 | 用量 |
---|---|
2. 反応液 | 15 µL |
3. プライマー・プローブ液 | 3 µL |
4. 滅菌水 | 6 µL |
合計 | 24 µL |
- 反応条件
Step | Temperature | Time | Cycle |
---|---|---|---|
Reverse Transcription | 52℃ | 300 sec | – |
Initial Denature | 95℃ | 10 sec | – |
Denature | 95℃ | 5 sec | 45 Cycles |
Annealing | 60℃ | 30 sec |
Active Channels : Green(FAM), Red(Cy5)
- Takara SARS-CoV-2 ダイレクトPCR検出キットにおける各検出対象の検出フィルター
検出対象遺伝子 | 検出フィルター |
---|---|
SARS-CoV-2 | Cy5 |
IC(内在性コントロール) | FAM |