第六十一回 阿修羅像をめぐる鬼神学
第六十一回 阿修羅像をめぐる鬼神学 奈良での学会を翌日に控えたある夏の夕刻に興福寺を訪れた。三面六臂の阿修羅像を観るためだ。眉をわずかに引き寄せ考え事をしている様子の正面の顔は魅力的だ。こういう表情はどこかで観たことが…
2023.08.02 金田 美穂
第六十一回 阿修羅像をめぐる鬼神学 奈良での学会を翌日に控えたある夏の夕刻に興福寺を訪れた。三面六臂の阿修羅像を観るためだ。眉をわずかに引き寄せ考え事をしている様子の正面の顔は魅力的だ。こういう表情はどこかで観たことが…
2023.06.28 金田 美穂
第六十回 キリマンジャロの老豹 本を買い求めて帰宅して読み始め、あれ? どこかで読んだことがあると思いながら、本棚を見ると同じ本が見つかることがある。コーヒーカップを手に、モノトーンの北向きの部屋で、重ねて購入した本に…
2023.05.30 金田 美穂
第五十九回 未来のおきく 久しぶりに映画館に出かけ、「せかいのおきく」(監督・阪本順治)を観た。父親を襲った刺客に斬られ声を失った“おきく”と、汲み取りを生業とする汚穢屋(おわいや)の若者たちとの青春を描いた物語だ。 …
2023.04.26 金田 美穂
第五十八回 チャット狂騒 「先生、まだっすか?」しばらく居眠りをしていた彼が声をあげた。夜だいぶ遅くなっていたと思う。私は彼の論文ドラフトを読み、オリジナルを損なわずに直すにはどうするか、パソコンに向い、悪戦苦闘してい…
2023.03.29 金田 美穂
第五十七回 研究費(2)桜の酔い 神楽坂で集まりがあり、その帰り道でふと松井秀喜選手の大型パネルをエンゼル・スタジアムで眺めたことを思い出した。大谷、ダルビッシュ選手など米大リーグ選手などを擁する2023ワールド・ベー…
2023.02.22 金田 美穂
第五十六回 梅の便り 紅梅が咲き始めている。この辺では白梅は少し遅く咲く。梅の花で思い出すことがある。「研究室は“一将功成りて万骨枯る”ではだめ。学生・院生がそれぞれポツポツと花を咲かせられなければね」と…
2023.01.25 金田 美穂
第五十五回 塩1トンには達しないまでも 「免疫や生殖の研究グループと共同でレトリートを計画している。そこで新メンバーに向けて、エピジェネティクスについて話してくれる?」と米国の友人が連絡してきた。そして「…
2022.12.27 金田 美穂
第五十四回 穏やかな午後の電車内 今年も残り少なくなったある日の午後、都心に向かう電車に乗り込みドア付近に近い席についた。朝夕の通勤時間帯を避ければゆったりと座れる電車の中、いつもは文庫本の時間だ。ふと向かいの席を見る…