塩田 邦郎(しおた・くにお)
東京大学名誉教授
1950年鹿児島県生まれ。博士(農学)。79年東京大学大学院農学系研究科獣医学専攻博士課程修了後、武田薬品工業中央研究所、87年より東京大学農学生命科学研究科獣医学専攻生理学および同応用動物科学専攻細胞生化学助教授、98年より同細胞生化学教授。
2016年早稲田大学理工学研究院総合研究所上級研究員。哺乳類の基礎研究に長く携わり、専門分野のエピジェネティクスを中心に、生命科学の基礎研究と産業応用に向けた実学研究に力を注ぐ。2018年より本サイトにて、大学や企業での経験を交え、ジェネティクスとエピジェネティクスに関連した話題のコラムを綴っている。
第九十二回 サクランボのジャム
寒波が押し寄せ、関東では珍しく雪が積もった。それでも庭の木々は硬い芽をつけている。葉をすっかり落としたサクランボの木の先端にも深紅の芽が観察される。透明に透き通ったサクランボのジャムは、この10年間、春から遅い夏にかけての朝食のアクセントだった。昨年のジャムはすでに食べてしまってないと思っていたが、「サクランボのジャムが1個、冷蔵庫の奥に残ってる!」と家人に告げられた。
元の会社の先輩だった友人Yから桜の苗木を贈ってもらったのは、35年ほど前のことだ。板橋区内の2DKの官舎に住んでいたのだが、子どもたちの成長を考えて引っ越してきた。当時はバブル景気の真っ只中で、一大学教員の給料で都内にマンションを買うなど、とてもできない相談だった。それでニュータウンに引っ越してきたのだ。その頃は庭の隅で数個の花を咲かせるだけであったが、いつかサクランボがなることを楽しみにしていた。




