第九十回 フォーエバーヤングのメッセージ

東大名誉教授・塩田邦郎先生コラム「エピジェネティクスの交差点」
塩田 邦郎 先生のご紹介

塩田 邦郎(しおた・くにお)
東京大学名誉教授
1950年鹿児島県生まれ。博士(農学)。79年東京大学大学院農学系研究科獣医学専攻博士課程修了後、武田薬品工業中央研究所、87年より東京大学農学生命科学研究科獣医学専攻生理学および同応用動物科学専攻細胞生化学助教授、98年より同細胞生化学教授。
2016年早稲田大学理工学研究院総合研究所上級研究員。哺乳類の基礎研究に長く携わり、専門分野のエピジェネティクスを中心に、生命科学の基礎研究と産業応用に向けた実学研究に力を注ぐ。2018年より本サイトにて、大学や企業での経験を交え、ジェネティクスとエピジェネティクスに関連した話題のコラムを綴っている。

第九十回 フォーエバーヤングのメッセージ

 「フォーエバーヤング優勝おめでとう!」という米国・コーネル大学の教授であり旧友でもあるダグ(ダグラス・アンツアック)からのメッセージが届いた。彼が主宰していた馬のゲノム生物学研究室には、かつて世界各国から留学生が集い、国籍や文化の異なる若者たちが同じ研究課題に取り組んでいた。年の終わりに届いた日本の競走馬の勝利を喜んでくれるこの一言は、国境を越えた学術的交流と、人の移動がもたらす多様性について改めて考える契機となった。

 日本の競走馬フォーエバーヤングは近年、香港やサウジアラビアでの国際舞台で優勝していた。そして、ついにアメリカ競馬のダートコースの今年を締め括る世界最高峰のレース、ブリーダーズカップ・クラシックで優勝したのだ。さらに「ロサンゼルス・ドジャースの優勝では大谷翔平選手と山本由伸選手が活躍した」と彼のメッセージは続く。

 脳裏に、ウクライナ出身の大学院生だったユリア・クレメンスカとマキシム・クレメンスコイの両名の顔が浮かんだ。かつて私たちの研究室にいた二人の留学生に「安青錦(あおにしき)優勝おめでとう!」とメッセージを送りたいと思ったのだ。

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