【お客様事例】FastGene Gel/PCR エクストラクションキットを利用したマウス糞便中の腸内細菌解析

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アプリケーションノート 2021<14>
製品名:Gel/PCR エクストラクションキット(Cat.No.FG-94602、FG-91202、FG-91302)
メーカー名:FastGene™

下記のデータは、岐阜大学大学院 自然科学技術研究科 溝口 桃加 様、竹森 洋 様より情報をご提供いただきました。

概要

糞便サンプルからDNA抽出を行う場合、糞便中に含まれる様々な菌からDNAを回収できることが重要です。特に細胞壁を有する微生物には、菌体を破砕する方法が非常に重要であるため、各社至適化された専用の試薬キットやガラスビーズ等を用いて処理が行われます。
本アプリケーションノートでは、専用の試薬キットとは異なるFastGeneエクストラクションキットを用いることで、WTマウス(C57BL/6J)と炎症性腸疾患マウス(C57BL/6J Ru2/Ru2 下痢発症)1の糞便から、安価で簡便にDNAを精製することができた事例となります。
精製できたDNAを用いて、腸内細菌に含まれるFirmicutesの量について検証を行いました。

方法

①DNA精製
サンプル
WT ワイルドタイプマウス C57BL/6J(日本エスエルシー株式会社)
diarrhea 炎症性腸疾患マウス C57BL/6J Ru2/Ru2 (岐阜大学)
上記2種のマウスの新鮮便(Fresh)と、回収して1時間後の糞便(Not Fresh)の2種類を用いた
試薬 FastGene Gel/PCR エクストラクションキット(FastGene)
②PCR:腸内細菌FirmicutesファミリーのリボゾームRNA遺伝子を増幅

試薬: Expand High Fidelity PCR System
(Roche,Cat.No.11732641001/11732650001/11759078001)

  • 反応液組成
    Template DNA(30 ng/μL) 1.0 μL
    Expand High Fidelity Enzyme mix 0.2 μL
    Expand High Fidelity Buffer(10×)with 15 mM MgCl2 2.5 μL
    Primer-F(10 pmol/μL) 0.5 μL
    Primer-R(10 pmol/μL) 0.5 μL
    dNTP mix(2 mM) 2.5 μL
    DW 17.8 μL
    Total 25.0 μL
  • PCR条件
  • 使用プライマー 2
    増幅サイズ:126 bp
    Primer-F:(Firm934F),GGAGYATGTGGTTTAATTCGAAGCA
    Primer-R:(Firm1060R),AGCTGACGACAACCATGCAC

結果

①各サンプルのDNA収量と精製度
  使用糞便量 DNA収量 A260値 A280値 A260 /A280
Fresh
(WT)
約100 mg 8.509 μg 1.702 1.146 1.48
Fresh
(diarrhea)
約100 mg 2.886 μg 0.577 0.406 1.42
Not Fresh
(WT)
約50 mg 14.330 μg 2.866 2.059 1.39
Not Fresh
(diarrhea)
約50 mg 7.016 μg 1.403 0.977 1.44
②等量の精製したDNA中に含まれるFirmicutesの量

まとめ
  • Gel/PCR エクストラクションキットを用いて、糞便からDNA精製を行い、腸内細菌に含まれるFirmicutesの量について検証することができた。
  • 炎症性腸疾患マウスでは、細菌叢の変化により、 Firmicutesの割合が低いことが示唆された。
  • 新鮮便と一定時間が経過した糞便では、新鮮便の方がPCRの増幅効率が高いため、新鮮便を用いて実験するのが望ましい。

参考文献
1:Simple chronic colitis model using hypopigmented mice with a Hermansky-Pudlak syndrome 5 gene mutation. Itoh Y, Nagaoka Y, Katakura Y, Kawahara H, Takemori H.
Pigment Cell Melanoma Res. 2016, 29: 578-582
2:Mouse Model of Metformin-Induced Diarrhea.
Takemori H, Hamamoto A, Isogawa K Ito M, Takagi M, Morino H, MIura T, Oshida K, Shibata T
BMJ Open Diabetes Res Care. 2020, 8:1

お客様のコメント
最初の変性剤(GP1)がグアニジンであり、大腸菌DNAを問題なく抽出できることを確認していたため、今回このキットを用いて、糞便からのDNA抽出を行いました。安くて簡単で、わざわざ専用キットを使わなくて済むので、在庫維持に気を遣う必要がありません。
NGCからのコメント
本製品は、アガロースゲルからの DNA 抽出およびPCR 産物の精製を目的として開発されております。
糞便からのDNA精製に関しましては、弊社ではサポートさせていただくことはできませんが、お客様の使用事例として、ご紹介いたします。

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