塩田 邦郎 先生のご紹介
第九十三回 桃ジュースとすっぽん
数日後にはWBCが始まるというウキウキした気分で、後楽園の近くでの宴席に招かれた。メンバーは5人。そのうち酒好きの2人がとりあえずビール、残りの1人と私はノンアルコールビール、そしてもう1人がメニューにあった桃のジュースを注文した。そういえば明日は桃の節句。ピンクの桃の花びらを想像しながら「ひな祭り」の風景を思い浮かべる。
宴席で5人のうち1人が「すっぽん」を注文した。私は思わず身を乗り出した。和牛を注文した他のメンバーの耳が微妙に動き、そして鼻と目が少し開いたような気がした。すっぽん料理など見たことがない。ところで、“鼈”この字を読めますか?これが“すっぽん”です。あたかも文化遺産が詰まっているような“鼈”の字、ただモノではない空気が漂う。
どんなふうに出てくるのだろう?首の長いカメが目をつむっているのか。あるいは甲羅の中に頭と手足、それに尻尾を引っ込めているのか。甲羅がついたままでどう食べるのだろう。興味津々で、首を少し伸ばして向かいに運ばれてくるのを待った。













塩田 邦郎(しおた・くにお)
東京大学名誉教授
1950年鹿児島県生まれ。博士(農学)。79年東京大学大学院農学系研究科獣医学専攻博士課程修了後、武田薬品工業中央研究所、87年より東京大学農学生命科学研究科獣医学専攻生理学および同応用動物科学専攻細胞生化学助教授、98年より同細胞生化学教授。
2016年早稲田大学理工学研究院総合研究所上級研究員。哺乳類の基礎研究に長く携わり、専門分野のエピジェネティクスを中心に、生命科学の基礎研究と産業応用に向けた実学研究に力を注ぐ。2018年より本サイトにて、大学や企業での経験を交え、ジェネティクスとエピジェネティクスに関連した話題のコラムを綴っている。