第三十三回 日焼けの幸福感

東大名誉教授・塩田邦郎先生コラム「エピジェネティクスの交差点」
塩田 邦郎 先生のご紹介

東京大学名誉教授

1979年より製薬会社中央研究所、1987年より現在まで東京大学(農学生命科学研究科)、2016年から2020年まで早稲田大学にて研究されてきた。素朴な生物学の影を残した時代から、全生物のゲノム情報を含む生命科学の基礎と産業応用の飛躍の時代になった。本コラムでは大学や企業での経験も交えながら、専門分野のエピジェネティクスを含めた自由な展開をお願いしました。


第三十三回 日焼けの幸福感

 桜の開花が宣言され日差しも強くなってくると、海や山で日焼けした時の心地良さを思い出す。皮が剥がれ始めるまでの少しの間の皮膚がしびれるような(どちらかというと)快感が懐かしく思いだされるのだ。しかし、人によっては水泡ができ化膿し痛みも出てひどいことになる。

 日差しがきつい時には外出はひかえて!と言われても日光を求めて野外に出たくなる。紫外線はシミ、ソバカス、シワの原因となるから美容の大敵と、日傘をさし、日焼け止めクリームを塗り、長袖シャツを用意してと、あらゆる対策をする。

 光合成を行うプランクトンに誘われて、動物性プランクトンやそれらを追いかけて大型の生物も海面付近まで浮上してくる。そして太陽の光を浴びながらのんびりと・・しかし、その生活は紫外線がゲノムDNAに損傷(注1)を与えるため簡単ではない。5億年前には現代と同じような様々な水性無脊椎動物がいたらしい。生命誕生から早期に藻類や細菌など単細胞生物が生じ、そのほんの一部が多細胞生物へ、そしてさらに複雑な動物や植物へと進化した。成層圏のオゾン層(注2)の形成は5〜6億年前とされており、生物の陸上への進出と時期が重なる。

 陸に上がった脊椎動物は両生類や爬虫類となり、鳥類や哺乳類が出現することになる。 降り注ぐ太陽のもとでの陸上の生活スタイルはさらに危険になる。最も深刻な紫外線のリスクは皮膚がん発生だ(注1)。オゾン層が紫外線を減弱させるとはいえ、生物側に紫外線対策が必要なのは言うまでもない。

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