第三十八回 17年前へドライブ

東大名誉教授・塩田邦郎先生コラム「エピジェネティクスの交差点」
塩田 邦郎 先生のご紹介

東京大学名誉教授

1979年より製薬会社中央研究所、1987年より現在まで東京大学(農学生命科学研究科)、2016年から2020年まで早稲田大学にて研究されてきた。素朴な生物学の影を残した時代から、全生物のゲノム情報を含む生命科学の基礎と産業応用の飛躍の時代になった。本コラムでは大学や企業での経験も交えながら、専門分野のエピジェネティクスを含めた自由な展開をお願いしました。


第三十八回 17年前へドライブ

 

 久しぶりに車を駆って、成田国際空港まで出かけた。成田-羽田の両国際空港を結ぶ直通電車が開通してからは、海外に出かける際に車で出かけることも無くなっていたのだが、17年間乗ってきた車を手放すことになり、最後のドライブに成田空港に向かったのだ。

 自宅周辺には大型ショッピングモールと巨大な倉庫の並ぶ物流基地が出来上がり、成田空港への線路にそった直通道路も開通している。しかし今回は、昔通った千葉県北西部の自宅から北上して国道356号を経由し、利根川の支流に沿い東に向かう片道約35kmのルートをとる。

 しばらく走ると川と土手に包まれた片側1車線の田舎道になった。17年前に車を買い替えた頃は、古い橋を過ぎたあたりにガラス戸と瓦屋根の街並みがあった。昭和初期のような雰囲気に誘われて車を留め、金魚鉢・竹ザル・陶器などを売っていた雑貨店をのぞいたこともあった。しかし、今回は人の気配は無く、もはや取り壊されるのを待っているかのように寂れていた。

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