第四十一回 牛の精進

東大名誉教授・塩田邦郎先生コラム「エピジェネティクスの交差点」
塩田 邦郎 先生のご紹介

東京大学名誉教授

1979年より製薬会社中央研究所、1987年より現在まで東京大学(農学生命科学研究科)、2016年から2020年まで早稲田大学にて研究されてきた。素朴な生物学の影を残した時代から、全生物のゲノム情報を含む生命科学の基礎と産業応用の飛躍の時代になった。本コラムでは大学や企業での経験も交えながら、専門分野のエピジェネティクスを含めた自由な展開をお願いしました。


第四十一回 牛の精進

 

 散りそこなった1枚の赤い葉が桜の枝につかまっている。季節は進みもうすぐ冬だ。“精進料理は季節を喰うところにある”、少年時代に禅寺の侍者を経験した水上勉氏のエッセイ「土を喰う日々」(水上勉、新潮文庫)にある。

 精進料理とは「精進物(肉・魚介類を用いない植物性の食物。野菜、穀類、海藻、豆類、木の実・果実)のみを用いた料理」とある(広辞苑)。また、精進の項(広辞苑)にも「肉食をせず、菜食すること」とあるのだが、「ひたすら仏道修行に励むこと」「一所懸命努力すること」の記載が先だ。さらに「土を喰う日々」には、鎌倉初期の禅僧・道元の「典座教訓」を引用し、精進料理の「精進」とは“料理には工夫の妙が要る”“先人の料理からさらによくしろ”といった意味であるとも記している。すると「精進」には“肉を食べない”という意味は含まれていなかったのだろう。

 ウシやヤギなど草食動物が分娩後に後産(胎盤と胎膜)を食べることをご存知だろうか?私は聞いてはいたのだが、実際に見たことがなかった。そこで動物行動学の専門家である菊水健史氏(麻布大学教授)に尋ねたところ、ウシやヤギが後産を食べている動画情報 <https://youtu.be/0W-1HwhM3b8><https://youtu.be/jhB-dAy4BbE>を送ってくれた。 

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