第五十一回 女王陛下の007

東大名誉教授・塩田邦郎先生コラム「エピジェネティクスの交差点」
塩田 邦郎 先生のご紹介

東京大学名誉教授

1979年より製薬会社中央研究所、1987年より現在まで東京大学(農学生命科学研究科)、2016年から2020年まで早稲田大学にて研究されてきた。素朴な生物学の影を残した時代から、全生物のゲノム情報を含む生命科学の基礎と産業応用の飛躍の時代になった。本コラムでは大学や企業での経験も交えながら、専門分野のエピジェネティクスを含めた自由な展開をお願いしました。


第五十一回 女王陛下の007

 

 「あの人、アレあの番組だよね?」「そうそう、アレなんと言ったかね?」… 顔は思い浮かべているが名前が出てこない。… そうそうエリザベス女王が、ダニエル・クレイグ扮する007とともにボンドガール(?)として登場したのは、ロンドンオリンピック開会式の映像だった。

 一時的な症状を“物忘れ”と呼んでいるうちは気楽だが、いずれにせよ、老化の兆しとも受け取られる。何かのきっかけで思い出すから大したことはない、と一般人は気楽を装える。しかし、認知症など他の脳機能障害も潜んでいるかもしれないと考えると、立場によっては深刻な事態を招きかねない。

 失語とは言葉(会話や文字)でものごとを表現したり理解したりする能力が(部分的または完全に)失われる障害だここではそこまで深刻ではない一時的な失語状態から垣間見えることについて記したい。

 軽い症状は多くの人が経験しているだろう。頭部の外傷、感染症、血管障害、腫瘍、あるいは遺伝子発現の中長期的な変化などにより、神経細胞の機能が低下したり消失することで、言語の能力(書く、話す、理解する)のいずれか、あるいは全部が障害を受けることになる。一時的な(あるいは可逆的な)“失語”状態も言語中枢や記憶に関連する領域を含め、より広い領域の機能不全による場合もあるだろう。

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