塩田 邦郎先生のご紹介
東京大学名誉教授
1979年より製薬会社中央研究所、1987年より現在まで東京大学(農学生命科学研究科)、2016年から2020年まで早稲田大学にて研究されてきた。素朴な生物学の影を残した時代から、全生物のゲノム情報を含む生命科学の基礎と産業応用の飛躍の時代になった。本コラムでは大学や企業での経験も交えながら、専門分野のエピジェネティクスを含めた自由な展開をお願いしました。
第三回 エピジェネティクスの主役DNAメチル化をたどる(1)
誰かが、どこかで、何かの発見があり、次の発見のきっかけになる。事の始まりは単純ではなく、物事は当初の考えのようには進まないが、それ以上に面白い展開になることがある。DNAメチル化とヒストン修飾はエピジェネティクスの主役である(ヒストン修飾についても別の機会に記したい)。DNAメチル化の発見について記したい。
DNAが遺伝情報を運ぶ本体であるとする概念は、ワトソン・クリックの“DNA二重らせん”の発見で定着した。しかし、"DNAだけが細胞・個体の世代を超えて受け継がれる“では説明できない現象が古くから知られていた(これについては別の機会に説明したい)。