日本ジェネティクスのテクニカルノートとは?
発売したばかりの新製品の性能評価や、既存製品の最適な条件を追求するための条件検討をすることでお客様に心からご納得頂いた上で商品をお使い頂けるよう、様々な評価試験を行っています。
採用前の検討資料として、または採用後の最適条件検討資料としてご活用ください。
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目的
先染め染色法によるアガロースゲル電気泳動を行う際に生じる、低分子領域のバンドの検出感度が低下する現象を改善する。
概要
先染め染色法では、使用する核酸染色試薬の種類に関わらず、低分子領域のバンドの検出感度が低下することがあります。
本テクニカルノートでは、Midori Green Xtra(MGX)を用いた先染め染色法における、低分子領域のバンドの検出感度を改善する3種類の方法を紹介します。
- 泳動時間の短縮
- 後染め染色法による追加染色
- 泳動バッファーへの核酸染色試薬(MGX)の添加
検出感度の改善策
電気泳動条件
- 先染め染色用ゲルを以下の条件で作製した。
- アガロースゲル:1% アガロースゲル(20 mL/ミニゲル1枚, Agarose S, ニッポン・ジーン)
- 溶媒:1×TAE バッファー
- MGX:4 μL/アガロース 100 mL
- 1 kb DNA Ladder PLUS (FastGene™, NE-MWD1P)を、1% アガロースゲルに5 μLアプライした。
- 電気泳動を以下の条件で行った。
- 電気泳動装置:Mupid®-exU
- 電気泳動条件:100 V, 30 min
- 泳動バッファー:1×TAE バッファー 350 mL
- 泳動後、以下の条件でゲルの画像を取得した。
- 撮影装置:FAS-Digi PRO(FastGene™, GP-07LED, GP-07LED/PC, GP-07LED-TAB)
- 撮影条件:Illuminator Blue/Green LED (500 nm)
F=5.6, Exposure=1 sec, ISO 100
改善策と結果
① 泳動時間の短縮
泳動時間を短縮した結果は下記の通り。
(泳動時間:10、20、25、30 min)
- 泳動時間を短縮することで、1,000 bp以下のバンドが検出可能となった。
- 泳動時間を20分まで短縮することで、全てのバンド(最小サイズ100 bp)が検出可能となった。
〈解説〉
この結果は、先染め染色法における低分子サイズ領域のバンドが見えなくなる原因が、長時間泳動によることを意味している。
また、この現象はMGX特有の現象でないことも確認している(参考)。
(参考)FastGene™ Midori Green Advance(Cat.No.NE-MG04)
※MGA使用量1%アガロース100 mLあたりに対し4 μL添加
② 後染め染色法による追加染色
後染め染色法による追加染色を行った結果は下記の通り。
染色溶液:1×TAE バッファー 100 mLに対し、MGX 10 μL添加
染色方法:先染め染色を行ったアガロースゲルを染色溶液に浸し、遮光して30分間振盪
全てのバンドが検出可能となった。
③ 泳動バッファーへの核酸染色試薬(MGX)の添加
以下の手順で泳動バッファーにMGXを添加し、電気泳動を行った。
泳動バッファーへ添加するMGX量に応じて、1,000 bp以下のバンド輝度に改善が見られた。
本テクニカルノートの通り、先染め染色法において低分子バンド領域の検出感度が下がる現象は、①泳動時間の短縮 ②後染め染色法による追加染色 ③泳動バッファーへの核酸染色試薬(MGX)の添加することで解消することができます。また、これらの結果は、検出感度の低下は、ゲルの低分子領域で核酸染色試薬の不足が進んだ結果として起こっていることを示唆しています。
本テクニカルノートに記載した解決方法は、以下にまとめた、それぞれのメリットデメリットを参考に使い分けください。
改善策 | 使用に適するケース | メリット | デメリット |
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① 泳動時間の短縮 |
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② 後染め染色法による追加染色 |
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③ 泳動バッファーへの核酸染色試薬(MGX)の添加 |
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*【参照】 1回の染色あたりに使用するMGX量
① 泳動時間の短縮 | ② 後染め染色法による追加染色 | ③ 泳動バッファーへの核酸染色試薬(MGX)の添加 | |||
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ゲル中含有量(μL/20 mL) | 0.8 | 0.8 | 0.8 | 0.8 | 0.8 |
後染め染色液中添加量(μL/100 mL) | - | 10.0 | - | - | - |
泳動バッファー中添加量(μL/350 mL) | - | - | 14.0 | 7.0 | 3.5 |
1回の実験で使用するMGX総量(μL) | 0.8 | 10.8 | 14.8 | 7.8 | 4.3 |