【お客様事例】超微量な深海・海洋環境DNA(1pg)からのショットガンメタゲノムライブラリー調製

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アプリケーションノート 2018<02> 
製品名:KAPA Hyper Prep Kit (KK8502, KK8503)
メーカー名:KAPA BIOSYSTEMS 社

下記のデータは国立研究開発法人海洋研究開発機構 海洋生命理工学研究開発センター 生命機能研究グループ 平井 美穂様 高木 善弘様のご厚意により掲載させていただきました。

 ここに注目!(日本ジェネティクス株式会社) 
超微量のDNA(1 pg)からのショットガンメタライブラリー調製にKAPA Hyper Prep Kitが使用できました!
詳細な実験情報やデータは、下記の論文をご覧ください。

【発表論文】
雑誌名  : Microbes and Environments
タイトル : Library Construction from Subnanogram DNA for Pelagic Sea Water and Deep-Sea Sediments
著者   : Miho Hirai, Shinro Nishi, Miwako Tsuda, Michinari Sunamura,Yoshihiro Takaki,and Takuro Nunoura
Doi     : 10.1264/jsme2.ME17132
URL   : https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsme2/32/4/32_ME17132/_article

背景

深海水塊、海洋堆積物、海底下掘削試料から得られる環境DNA は、ショットガンメタゲノム解析を行う際に以下のような点が問題となります。

環境DNA のショットガンメタゲノム解析を行う際の問題点
• 採取機会・量が限定的である
• 微生物マスが少ない
• 環境 DNA中の夾雑物が多い

 

 

• 1 ngに満たない極微量DNAからのライブラリー構築が必要となることがある
• 試料中の腐植酸や多糖類等が核酸溶液に残存し、ライブラリー構築における酵素反応を阻害することがある
• 上記のような夾雑物による阻害が疑われる場合、希薄な核酸溶液を更に希釈することで阻害を解消する必要性が生じることもある
• 希薄な核酸を扱う場合、実験操作中のコンタミネーションの影響を最小限に抑える必要がある

そこで、ラボコンタミネーションの影響に注意しながら、超微量環境DNA1 pg からショットガンメタゲノム解析ライブラリー作成が可能かどうか試みました。

実験前に

微量のDNA 量を扱う場合、ラボ内でのコンタミネーションやチューブやチップへのDNA の付着を十分に留意する必要があります。
これらのリスクを回避するために、本事例で実際に行った注意点をご紹介します。

【注意点】
1)ラボでのコンタミネーションのリスク回避
・ 作業は全てテーブルコーチ(クリーンベンチ)内で実施する
・ オートクレーブ中は蒸気によるDNAの飛散が生じる等の、核酸が混入するリスクがあるため、使用するチューブのオートクレーブは避ける
・ DNA溶出には、購入後UV照射したdH2O(DNA Free Water)を使用する
・ フィルターチップを使用する
・ UV照射したクリーンルーム用のグローブを使用する
2)プラスチックへの吸着によるDNAロスのリスク回避
・ チューブは全て低吸着(low-Bind)タイプのチューブを使用する
・ ピペッティング回数は5回以内とする
(以前、上記の点を注意せずに実験を行った結果、コンタミネーション由来のデータが30%に達する事例がありました。)

ワークフロー

サンプリング
東北沖から採取した有機物含量の高い
表層堆積物
  マリアナ海溝域の有機物含量の低い
表層堆積物
  多糖を有す光合成プランクトンを含む北太平洋の
表層海水
 



深海表層堆積物
〈シリカメンブレン法〉
PowerMax® Soil DNA Isolation Kit(MoBio Lab社)
  表層海水
〈粗抽出〉
① 400 mM Tris-HCL, 60 mM EDTA,
  150 mM NaCl,1% SDS(pH8.0)
② 3 M酢酸カリウム(pH4.8)
※試薬、バッファーはオーダーメード調製
  ↓  
〈シリカメンブレン法〉
PowerSoil® DNA Isolation Kit
(MoBio Lab社)
DNAクリーンナップ
MagExtractor™ -PCR & Gel Clean up-(TOYOBO社)
糖や腐食物質などの環境DNA 中に混入してくる夾雑物 
影響
ライブラリー調製における各酵素反応
                       
反応前の夾雑物のクリーンナップが必要






調

 
断片化
 (物理的断片化/Covaris S220)
 
   KAPA Hyper Prep Kit
 
 
インデックスアダプター濃度:150 nM
 1 pg以上のライブラリー構築
 標準プロトコール(1 ng以上が適用)では困難
    ↓ 条件検討
 インデックスアダプター濃度を150 nMにする
 ことで問題なくライブラリー構築ができた

       Amplification
   インプット量: PCR cycle
         1 ng : 14
     100 pg : 18
       10 pg : 21
         1 pg : 25

末端修復およびAテーリング
アダプターライゲーション
ビーズ精製
ライブラリー増幅
ビーズ精製
     
シーケンス

  MiSeq Reagent Kit v3(600 サイクル)

結果:ライブラリーの評価

詳細な実験情報やデータは、下記の論文をご覧ください。

【発表論文】
雑誌名  : Microbes and Environments
タイトル : Library Construction from Subnanogram DNA for Pelagic Sea Water and Deep-Sea Sediments
著者   : Miho Hirai, Shinro Nishi, Miwako Tsuda, Michinari Sunamura, Yoshihiro Takaki,and Takuro Nunoura
Doi     : 10.1264/jsme2.ME17132
URL      : https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsme2/32/4/32_ME17132/_article
 

● クラスター解析

10 – 1000 pg の試料では、再現性良い結果が得られるが、1 pgでは増幅バイアスが大きくなりました。

● SSU rRNA遺伝子群集構造による比較

深海表層堆積物表層海水

コンタミネーションに由来すると推測される配列も含まれますが、1-10 pgの核酸から構築したライブラリーにおいても、その割合は小さく抑えることができました。

 

● リード毎のGC含量マップ

(全般的にインプット量のGC含量への影響は少ないですが、)試料によってはインプット量のリードGC含量への影響がみられました。

 

  考 察   
• KAPAでは10 pg以上のDNAから安定したライブラリーの調製が可能である
• 作業環境を改善することでコンタミネーションを抑えることができる

テーブルコーチ・水・試薬・道具などの作業環境を整えることで、1 pg でもラボコンタミネーションの影響を抑制できる

 
お客様のコメント
我々の扱うサンプルは、DNA濃度が測れないような環境試料が殆どです。キットの適応下限を切る、このような試料でもどうにかしてショットガンメタゲノム解析が出来ないかと思ったことが始まりでした。
10 pg以上のDNAがあれば、アダプターの濃度とサイクルを変更することで、あとは全く同じプロトコルで、再現性よくライブラリーの構築が可能でしたので、幅広い分野に活用できるかと思います。
この実験系では、いかにラボコンタミネーションを軽減するか、DNAをなくさないかが重要ですので、是非その点に気をつけて研究を行っていただければと思います。

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