第1弾 シェアストレス下で細胞を培養する
豊富な種類の細胞培養・観察容器を取り扱っているibidi社ですが、灌流培養専用装置、ibidiポンプシステムという機器があるのはご存知でしょうか?ibidiポンプシステムの魅力について、さまざまな視点から5回に渡ってお届けします。
第1弾は「シェアストレス下で細胞を培養する」ためのマイクロスライドに着目しました。灌流培養に適したibidiポンプと、マイクロスライドを組み合わせて使うことでどんなことができるのか?詳しく見ていきましょう。
第1弾 シェアストレス下で細胞を培養する ← 今回はこちら
第2弾 長期培養を可能にする
第3弾 血管内皮を模倣する
第4弾 スフェロイドを育成する
第5弾 セルアレイと組み合わせる
ibidi ポンプシステムとは?
- 培地を灌流(フロー)させながら細胞を生育、観察できる装置です。
- HUVEC(ヒト臍帯静脈内皮細胞)などの内皮細胞にシェアストレスを与えながら培養することで、血管を模倣した、より生体内に近い条件の培養が可能になります。
- 独自の流体(Fludic)ユニットを使用し、左右シリンジを切り換えながら培地を循環させることで、途切れることなく“長期間”かつ“一定方向”の灌流を可能にします。
-
流量、シェアストレス、流れのタイプ(一方向定常流、パルス、振動流)など、多様な流れをコントロールすることが可能です。
-
専用ソフトには、ibidi社製チャネルスライドの形状がプログラムされており、数値を入力するだけで、シェアストレス等の物理パラメーターを細胞に与えることができます。
- ヒーティングシステム(別売)との組み合わせで、培養しながら顕微鏡観察することもできます。
CatNo. | 概要 | 単位 | 価格(税抜) |
---|---|---|---|
ib10902 | ibidi Pump System (ポンプ本体、シリンジ固定ユニット、PC) |
1式 | ¥3,860,000 |
※価格は2023年4月現在のものです。
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灌流培養する意義~血管内皮にかかるシェアストレスを模倣する
(上)血管内の内皮細胞は継続的に流れに晒されています。
(下)流動下でのin vitro細胞培養は、これらの生理学的条件をシミュレートすることに用いられます。
灌流培養の持つ大きな目的のひとつは、細胞にシェアストレス(剪断力)を与えることです。上皮細胞や内皮細胞など多くの細胞は、液体の流れの中で存在し、絶えずシェアストレスにさらされています。
ibidi ポンプシステムでは、流体ユニットとチャネルスライドを組み合わせることで、各血管の種類に応じた値のシェアストレスを細胞に与えることができます。このため、血管内皮などをイメージしたin vitro実験系を構築することができます。
血管 | シェアストレス (dyn /cm²) |
参照 |
---|---|---|
大動脈 | ~ 1 – 22 | C.P. Cheng, R.J. Herfkens, C.A. Taylor. Comparison of abdominal aortic hemodynamics between men and women at rest and during lower limb exercise. J Vasc Surg, 2003, 10.1067/mva.2002.107 詳細を読む |
動脈 | ~ 10 – 70 | C.P. Cheng, R.J. Herfkens, C.A. Taylor. Abdominal aortic hemodynamic conditions in healthy subjects aged 50-70 at rest and during lower limb exercise: in vivo quantification using MRI. Atherosclerosis, 2003, 168(2):323–31 詳細を読む |
静脈 | ~ 1 – 6 | A.M. Malek, S.L. Alper, S. Izumo. Hemodynamic shear stress and its role in atherosclerosis. JAMA, 1999, 282(21):2035–42 詳細を読む |
毛細血管 |
~ 3 – 95 |
A.G. Koutsiaris, et al. Volume flow and wall shear stress quantification in the human conjunctival capillaries and post-capillary venules in vivo. Biorheology, 2007, 44(5–6):375–86 詳細を読む |
ibidiポンプシステムで作り出すことのできる流れ
ibidiポンプシステムでは定常流だけではなく、パルス流、振動流など、流れのタイプもコントロールすることができます。
タイプ | 生理学的発生条件 | 流量 | 流れの方向 | ibidiポンプ/スライドによる生成 |
---|---|---|---|---|
層流 | 健康な血管のいたるところで発生 | ― | Yes | |
一方向層流(定常流) | 健康な小血管で発生 | 一定 | Yes | |
パルス層流 | 動脈血管において心拍によって引き起こされる | 定期的に変化 | 一定 | Yes |
振動流 | (乱流をシミュレートする手段として利用) | 一定 | 定期的に変化 | Yes |
乱流 | 病態生理学的プロセスの中で発生 | 変化 | No |
ibidiポンプシステムのメリット
ibidiポンプ以外にも、灌流ポンプシステムにはいくつかの種類があり、それぞれに異なる特性があります。
ibidiポンプシステムは、特殊なスイッチングパターンを使用して培地を循環させることにより、安定した一方向の流れの中で、顕微鏡観察なども取り入れながら、長期間細胞培養できる点がメリットです。
シリンジポンプ | ペリスタポンプ | ibidiポンプ システム |
|
送液安定性 | 安定(初期パルスで発生) | 不安定(ドライブシャフトを用いるロータータイプでは送液が脈動する) | ほとんどなし(バルブ作動中のみ発生) |
培地とともに非接着性細胞を流した場合の細胞へのダメージ | ほとんどなし (沈澱が問題になる場合があり) |
送液する際に細胞が潰される | 低い |
顕微鏡観察 | 可 | 培地が脈動するため困難 | 可 |
インキュベーター内でのセットアップ | 難しい | 難しい | 可 |
低ボリュームでの長期実験 | 不可 | 可 | 可 |
プログラム可能 | 可 | 可 | 可 |
ibidiポンプシステムで使用できる消耗品ラインナップ
ibidiでは、いろいろなシェアストレスや流路を可能にするために、様々なチャネルスライドを提供しています。チャネルスライドのチャネル高を変えることで、流路径を選択できる他、Y字スライドなど血管分岐をイメージしたスライドまで幅広いラインナップが用意されています。
スライド別 チャネルの高さ |
0.1 mm | 0.2 mm | 0.4 mm | 0.5 mm | 0.6 mm | 0.8 mm |
µ-Slide I Luer | ||||||
μ-Slide y-shaped |
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μ-Slide 6(VI) | ||||||
長期培養 | ||||||
シェアストレス |
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この記事で紹介した製品
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μ-Slide6(VI) 0.4の詳細・価格はこちら
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