なぜ 私たちはパラフィン切片でISHを行うのか?①

ISH、組織染色の実話
  • ジェノスタッフ株式会社とは?:ISH(in situ Hybridization)、免疫組織染色を始めとした遺伝子機能解析に関する研究受託会社
  • ISHにおいては4,000遺伝子以上の解析に成功しており、また、1,000種類以上の抗体の免疫染色の受託経験をもつ、高い技術力をもった会社
  • 動物の解剖、固定、薄切、染色など一連の作業をすべて自社で実施
  • その豊富で貴重な経験と知識を生かして、同社の野口社長が、自社のホームページで発信されているコラムを、特別な許可をいただき転載しております。
  • 時に辛口で、時に生々しい野口社長のコラムをお楽しみください。

第6弾 「なぜ 私たちはパラフィン切片でISHを行うのか?①」

論文などでISH(RNAの検出)のデータを見ると凍結切片を使う方が多いようです。たぶんそれは凍結切片の方が楽で感度が高いと考えられているからだと思います。

ただ、私たちはISHの受託試験ではかなり前から凍結切片は使わず、ほぼ100%パラフィン切片で行っています。理由はたくさんあるのですが今回は実際にあった事例を一つを書きます。

私たちが考える『パラフィン切片 vs 凍結切片 』比較をご覧ください。

凍結切片 VS パラフィン切片
  凍結切片 パラフィン切片
固定 未固定でも可 必要
検出感度
切片の綺麗さ
保存方法 -20℃~-80℃ 4℃
取扱い
安定性と再現性
切片の強さ
組織:マウス小腸 ISH染色写真(GeneA)
凍結切片 VS パラフィン切片
Hybri:55℃ Hybri:60℃
Wash:55℃ Wash:60℃

ある遺伝子GeneAのRNAプローブでマウス腸管を用いてISHを行った染色写真です。

凍結切片は、ある研究施設から提供された染色写真です。
パラフィン切片は、私たちが染めた染色写真です。

全く同じRNAプローブを用いてマウス小腸を染めています、画像はアンチセンスプローブの写真です(センスプローブは染まっていませんのでSN比は問題ありません)

注目部位はパイエル板の上皮で、凍結切片の結果を検証してほしいということでした。問題は同じRNAプローブなのに、この2つは特異性が異なったということです。凍結切片はマウス小腸の絨毛上皮が染っていますが、パラフィン切片では全く染まっていません。

後の実験でパラフィン切片の特異性が正解と判明しました!

ではなぜ異なるのか!?染色条件はHybriとWashの温度が5℃違うだけです。

そんなの染色特異性が異なって当たり前、プローブのデザインや他遺伝子との相同性によって違うだろ!!!と言われる声が聞こえますが・・・まさにその通りです。。。

でも実際論文をみるともっと低い温度の40℃や50℃でISHを行っているデータが掲載されており、プローブの配列領域からみても非特異性では!?思うようなデータも多々あります。パラフィン切片を用いて検証してみると全く異なる結果になることは珍しくありません。

ノーザンならあり得ない条件だし、どうして!?

私たちも過去に経験しました。

ポイントは比較表にある切片強度にあります。凍結切片は温度を上げたり厳しい条件では組織がボロボロになったり剥がれたり、どうしても検討の範囲が限られます。(これはホールマウントISHでも同じことが言えます)

なぜ私たちはパラフィン切片でISHを行うのか?

パラフィン切片は、高温、ダメージに強く、特異性と信頼できるデータを追及するにはパラフィン切片が一番と考えています。

そして私たちはパラフィン切片で4,000遺伝子以上のISHの結果を報告しています。

比較表にある 、本当???とツッコミされる他の個所は、今後のコラムで書いていきます。次回は凍結切片を用いた免疫染色の条件検討方法について書きます。

2018/1/27 掲載

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