第二十四回 BCGとゲノム・エピゲノムの記憶

塩田先生コラム 第九回
塩田 邦郎 先生のご紹介

早稲田大学 理工学術院総合研究所 客員上級研究員・客員研究院教授
(東京大学名誉教授)

1979年より製薬会社中央研究所、1987年より東京大学(農学生命科学研究科)、2016年からは早稲田大学にて研究されてきた。素朴な生物学の影を残した時代から、全生物のゲノム情報を含む生命科学の基礎と産業応用の飛躍の時代になった。本コラムでは大学や企業での経験も交えながら、専門分野のエピジェネティクスを含めた自由な展開をお願いしました。


第二十四回 BCGとゲノム・エピゲノムの記憶

 約1世紀もの長い歴史を持つ結核予防ワクチンBCG(bacillus Calmette-Guérin)に注目があつまっている。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者数や死亡者数は、BCG接種が行われている国では少ない傾向にあるという(*脚注)。

 結核以外への感染症予防効果“BCGの非特異的な感染予防効果”については“新生児へのBCG接種は小児死亡率を下げる”という疫学調査結果もあり、しばらく前から唱えられてきた。現在、新型コロナウイルス感染対策としてBCG臨床試験がオランダなど4カ国で行われている(*)。

 BCGといえば、生徒全員が集められ濃い青色の注射器でまくりあげた前腕に皮内注射をされた1960年頃のツベルクリン検査を思い出す。結核菌成分(精製ツベルクリン)注射の2日後に、発赤の有無を検査され、発赤が1cm以上なら陽性、発赤が無ければ陰性、1cm以下の小さな発赤では偽陽性と判定された。ツベルクリン反応が陽性なら、結核に対する免疫が備わっているとされ無罪放免になった。しかし、陰性や偽陽性だとBCG注射の罰がまっていた。当時はツベルクリン反応が陽性になるまで、BCG接種は何度も行われた。陰性と判定されると情けない気持ちになった。

 「BCG注射は痛いぞ!」と年長者が(頼みもしないのに)親切に教えてくれる。悪童たちはBCG注射を受けないですむように知恵を絞り、上手くできれば陽性になれるかも!と、皮内注射部位が赤くなるようを指先で弾いた。しかし、直径1cmほどの赤い円にするのは難しかった。順番が回ってくるまで時間があり、弾きすぎて前腕が真っ赤になったときなど、怒られたうえに偽陽性とされBCG接種の罰を受ける結果になった。学童を対象に結核予防のため毎年行われていた光景だ。我が国では近年は乳幼児(生後5か月から8か月頃)全員にBCGを接種することになっており、ツベルクリン世代を含む全員がBCG接種を受けている。

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