第三十五回 カニのみそ汁は何かの兆し

東大名誉教授・塩田邦郎先生コラム「エピジェネティクスの交差点」
塩田 邦郎 先生のご紹介

東京大学名誉教授

1979年より製薬会社中央研究所、1987年より現在まで東京大学(農学生命科学研究科)、2016年から2020年まで早稲田大学にて研究されてきた。素朴な生物学の影を残した時代から、全生物のゲノム情報を含む生命科学の基礎と産業応用の飛躍の時代になった。本コラムでは大学や企業での経験も交えながら、専門分野のエピジェネティクスを含めた自由な展開をお願いしました。


第三十五回 カニのみそ汁は何かの兆し

 英国を舞台にした海外ドラマ(吹き替え版)を見ていたとき、主人公が「・・カニの味噌汁・・」と話したのが聞こえた。いつかコペンハーゲンでウナギの燻製を売っているのを見たことがあるし、グルノーブルでは蕎麦粉のガレットも食べたこともあるから、ロンドンで“カニのみそ汁”も有りか!しかし、それ以来、頭の中で“カニ”がザワザワと騒ぎはじめた。

 私たちは耳で拾った声(音)を、話の前後や周囲の状況そして過去の経験などから脳が総合的に判断する。ドラマの展開からすると違和感は残ったままだった。聞き間違いだったのだろうか?

 老人性あるいは突発性難聴はいずれも原因不明の場合が多いらしい。ヒトの耳では20〜20,000Hzの振動を感知できる。内耳の音の受容器官・蝸牛の基底部に存在する有毛細胞(群)が高音(振動数が大きい)を担当し、頂部の有毛細胞が低音を受け持つ。声が鼓膜を震わせた振動が有毛細胞(内・外有毛細胞)(注1)に伝わり、神経を経由して脳で認識される。高音だけが聞こえなくなる人もいるが、日常の会話は聞こえているため難聴とは気づかないこともあるらしい。

 世界的な半導体不足で新車の生産がストップした、とニュースになっている。17年間乗り続けている私の愛車は、車検時にエンジン回りのオイルの滲み出しが見つかりパッキンをすべて取り替えたし、ブレーキ関連など足回りにも注意しているから、しばらくは問題ないだろう。しかし、窓の開閉でガラスと金属・ゴムなどが擦れる音がする、電動バックミラーの動きがギクシャクする、など小さなトラブルが増えている。車は約3万個もの部品からなり原材料も様々であるから、いつまでも新車と同じ状態を期待するのは無理だろうと納得している。

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