【お客様事例】グリッド線を活用したシングルセルトレース

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アプリケーションノート 2021<02>
製品名:μ-Dish 35 mm low Grid-500(Cat.No. ib80156)
    μ-Dish 35 mm high Grid-500 Glass Bottom(Cat.No. ib81168)
メーカー名:ibidi

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下記のデータは、名古屋市立大学大学院 薬学研究科 田中正彦先生達のグループが、Y. Horie et al.(2021)Neuroscience 458:87-98.にて、実際に用いた手法を、ご厚意で掲載させていただいております。
本論文において、田中先生は、CaMKIIα, IIβ, IVそれぞれがプルキンエ細胞の樹状突起形成において相補的に機能していることを明らかにしています。

概要

μ-Dish 35 mm low Grid-500とμ-Dish 35 mm high Grid-500 Glass Bottom(以下、μ-Dish 35 mm Grid-500 シリーズ)は、底面に500 μm グリッド線が付いた顕微鏡観察用培養ディッシュです。このグリッド線は、ディッシュ上にある細胞個々を座標として把握できるため、シングルセルトレースなどに大変活躍します。
本アプリケーションノートは、μ-Dish 35 mm Grid-500シリーズのグリッド線を活用し、エレクトロポレーション法でsiRNAを導入したプルキンエ細胞を、10日にわたって追跡した事例を紹介します。

ポイント

本実験系は、ノックダウンした単一細胞を10日後に同定する必要がある実験です。細胞同定のために、siRNA導入と共に蛍光色素も導入しますが、導入10日後には蛍光色素はほぼ脱色してしまうので、細胞同定には役に立ちません。そこで、プレート上のグリッド線を用いて細胞を同定し、遺伝子ノックダウンの影響の有無を把握することに活用しています。

実験方法

  1. μ-Dish 35 mm Grid-500 シリーズに対し、以下の手順でpoly-L-lysine(MW 30,000-70,000)によるコーティングを行った。
    ・100 μg/mL poly-L-lysine溶液400 μLを入れた
    ・ クリーンベンチ中(紫外線下)に一晩置いた
    ・ 超純水で4回洗浄した
  2. マウス小脳より回収した細胞をディッシュに播種して初代培養を行った。
  3. 播種10日後、プルキンエ細胞に対して単一細胞エレクトロポレーション法を用いて、CaMKIIα, IIβ, IVのsiRNA及び赤色蛍光色素(AlexaFluor 594)を導入した。
  4. 導入10日間後、固定処理を行い、calbindin(プルキンエ細胞マーカー)及びCaMKIIαに対する免疫染色を行った。
    使用抗体:
    ・rabbit anti-calbindin(CB-38a, Swant)
    ・mouse anti-CaMKIIα(C265, Sigma-Aldrich)
  5. グリッド線を元に細胞を同定し、共焦点レーザー走査顕微鏡で蛍光像を取像した。
    使用顕微鏡:LSM510META および LSM800(Carl Zeiss)

結果

  • μ-Dish 35 mm high Grid-500 Glass Bottom で培養した細胞を微分干渉顕微鏡で観察を行った(図1)。
    グリッド線によって隔てられた区画に、細胞が存在していることを確認した。

Axiovert(Carl Zeiss)
対物レンズ EC Plan-Neofluar, 10X(Carl Zeiss)

図1 導入前の細胞(Day 10)とグリッド線の様子(微分干渉顕微鏡観察像)

 

  • Day 10に、エレクトロポレーション法を用いてsiRNAを導入後、蛍光及び微分干渉像を取像した(図2)。
    #1:エレクトロポレーション法を用いてsiRNA及び赤色蛍光色素を導入したプルキンエ細胞
    #2:導入していない細胞

Axiovert(Carl Zeiss)
対物レンズ:EC Plan-Neofluar, 20X(Carl Zeiss)
励起 543 nm, 蛍光 >545 nm

図2 導入直後の蛍光顕微鏡観察および微分干渉顕微鏡観察像
#1 導入細胞, #2 導入していない細胞

 

  • siRNA導入の10日後(Day 20)に、グリッド線を用いて同定したsiRNA導入細胞の様子(図3)。
    図のようにグリッド線を利用し、細胞のあった領域(座標)を観察することで、siRNA導入細胞を同定することが出来た。

Axiovert(Carl Zeiss)
対物レンズ:EC Plan-Neofluar, 20X(Carl Zeiss)
励起 543 nm, 蛍光 >545 nm

図3 導入10日後の蛍光顕微鏡観察および微分干渉顕微鏡観察像
#1 導入細胞, #2 導入していない細胞

 

  • 免疫蛍光染色後、再度グリッド線を用いて同定したsiRNA導入プルキンエ細胞の様子(図4)。

・siRNAを導入した細胞#1ではCaMKIIαシグナルが非常に弱く、ノックダウンが起こっていることが確認できる。
・細胞#1の樹状突起は分枝が少ないことがわかる。
・この手法により、樹状突起形成にはCaMKIIα, IIβ, IVが必要であることが明らかとなった。

対物レンズ:Plan-Neofluar, 40X(Carl Zeiss)
1 励起 543 nm, 蛍光 >545 nm
2 励起 633 nm, 蛍光 >635 nm

図4 siRNA導入したプルキンエ細胞の蛍光免疫染色画像 
#1 導入細胞, #2 導入していない細胞

結論

グリッドを活用することにより、導入直後の細胞を特定し、導入10日後に免疫染色した細胞を同定することができた。

お客様のコメント
siRNAとともに導入した蛍光色素は導入10日後にはほぼ脱色してしまうので、細胞同定には役立たないのですが、ibidi μ-Dish 35 mm Grid-500シリーズであれば、グリッドを用いて細胞を同定しつつイメージングを行うことが可能だろうと期待して使用しました。
期待通り、グリッドを用いて細胞を同定しつつイメージングを行うことができ、大きなメリットが感じられました。

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