第六十七回 かずのこの一粒

東大名誉教授・塩田邦郎先生コラム「エピジェネティクスの交差点」
塩田 邦郎 先生のご紹介

塩田 邦郎(しおた・くにお)
東京大学名誉教授
1950年鹿児島県生まれ。博士(農学)。79年東京大学大学院農学系研究科獣医学専攻博士課程修了後、武田薬品工業中央研究所、87年より東京大学農学生命科学研究科獣医学専攻生理学および同応用動物科学専攻細胞生化学助教授、98年より同細胞生化学教授。
2016年早稲田大学理工学研究院総合研究所上級研究員。哺乳類の基礎研究に長く携わり、専門分野のエピジェネティクスを中心に、生命科学の基礎研究と産業応用に向けた実学研究に力を注ぐ。2018年より本サイトにて、大学や企業での経験を交え、ジェネティクスとエピジェネティクスに関連した話題のコラムを綴っている。


第六十七回 かずのこの一粒

 “かずのこ”は子孫繁昌の象徴として婚礼等の祝儀にも用いられてきた。おせちにも欠かせず、我が家の元旦の食卓にも“かずのこ”が添えられていた。醤油漬けの“かずのこ”を前に、今年も正月らしい気分になったのだが、はたして子孫繁昌と結びつけるのは相応しいことなのだろうか? 深刻な顔をした親ニシンたちに相談を持ちかけられたような気がした。

 “かずのこ”を取り出した後のニシンは、かつては綿花作り用の肥料となり、近年では大型魚の養殖の餌になっているという。卵は胚を育てるために栄養が豊富であるが、親魚は大量の卵を育てるために生命力の多くを費やしている。卵に養分を吸い取られた魚体の商品価値は低いのだ。

 私たちは随分と魚卵にお世話になっている。「いくら」も寿司種としてお馴染みで年に数回、「たらこ」はもう少し頻繁に食べている。随分と昔になるが、ほんの少しだけクラッカーに乗せたキャビアも食べたことがある。“子持ちシシャモ”や“子持ちカレイ”などは親魚ごと食卓にのぼるが、主役は卵だ。

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