塩田 邦郎(しおた・くにお)
東京大学名誉教授
1950年鹿児島県生まれ。博士(農学)。79年東京大学大学院農学系研究科獣医学専攻博士課程修了後、武田薬品工業中央研究所、87年より東京大学農学生命科学研究科獣医学専攻生理学および同応用動物科学専攻細胞生化学助教授、98年より同細胞生化学教授。
2016年早稲田大学理工学研究院総合研究所上級研究員。哺乳類の基礎研究に長く携わり、専門分野のエピジェネティクスを中心に、生命科学の基礎研究と産業応用に向けた実学研究に力を注ぐ。2018年より本サイトにて、大学や企業での経験を交え、ジェネティクスとエピジェネティクスに関連した話題のコラムを綴っている。
第六十八回 カリフラワー応援歌
ブロッコリーが2026年から国民生活に重要だとして国が位置付ける「指定野菜」に加わることになった(NHKニュース 2024年1月30日)。「指定野菜」と位置付けられる品目は、消費量が多いことが条件の1つで、これまでキャベツやだいこんなど14の野菜が指定されている(注1)。
ブロッコリーと聞いて、米国ニューメキシコ州のサンタフェで開催された“栄養とエピジェネティクス”をテーマにした集まりを思い出した。スペイン風の建築物が残る州都サンタフェは人口約5万人程度の小さな街で、標高約2000メートルのロッキー山脈の麓にある(注2)。夏は避暑客、冬はスキー客と多くの人々が訪れるが、オフシーズンはひっそりとして、そんな中で2000年代初めに数十人の小さなシンポジウムが開催され、ブロッコリーの抗がん作用についての話題があった。
私がしばらく滞在したミズーリ州セントルイスでは、1977年当時は野菜の栄養素はビタミン剤で賄えるとして、生野菜はあまり食べられていなかった。ドラッグストアには専用コーナーがあり、喉に詰まるのではないかと心配になるほどの大きさで色とりどりのビタミン剤やサプリメントが並んでいた。