第六十二回 ありのままの顔

東大名誉教授・塩田邦郎先生コラム「エピジェネティクスの交差点」
塩田 邦郎 先生のご紹介

東京大学名誉教授

1979年より製薬会社中央研究所、1987年より現在まで東京大学(農学生命科学研究科)、2016年から2020年まで早稲田大学にて研究されてきた。素朴な生物学の影を残した時代から、全生物のゲノム情報を含む生命科学の基礎と産業応用の飛躍の時代になった。本コラムでは大学や企業での経験も交えながら、専門分野のエピジェネティクスを含めた自由な展開をお願いしました。


第六十二回 ありのままの顔

 朝、寝ぼけ眼(まなこ)で鏡に向かう。これが私の顔だろうか? 鏡に映った顔か、鏡を見ている側の問題なのか、確信を持てないまま、冷たい水で顔を洗うと、少しだけ自分を取り戻す。

 随分と頼りないこの朝の光景は、いつ始まったのだろう。『レナードの朝』(オリバー・サックス(著)、石館康平、石館宇夫(訳)晶文社)のような不安定な朝の時間、「私はホントに私?」と問いかけている。

 顔認証を取り入れたスマートフォンは、難なく私を認識しアプリを起動してくれる。パスコード入力が省けて便利だが、新型コロナ禍で始まったマスクをつけたままでも顔認証が可能、となると、鏡で顔全体を見て不安に陥っている自分よりも、スマートフォンの方が確かなのか? と戸惑う。

 ネット配信などで、海外ドラマを観る機会が増えてきた。見慣れたハリウッド映画やヨーロッパの古典映画と違い、初めてみる俳優のドラマだと登場人物の区別がつきにくくなり、ストーリーを追うのにも苦労することがある。国内ドラマの場合であれば、初めての俳優であっても混乱することは少ない。どうやら私の顔を識別にはバイアスがかかっており、欧米人に対する顔の識別の精度はよほど低いらしい。

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