【お客様事例】ラットの腸間膜脂肪組織から抽出したRNAを用いた発現定量解析のための逆転写酵素反応

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アプリケーションノート 2018<18> 
製品名:FastGene™ Scriptase Ⅱ Master Mix(5X)(NE-LS64)
メーカー名:日本ジェネティクス株式会社

下記のデータは、静岡県立大学 栄養生理学研究室 本間一江様のご厚意により掲載させていただきました。

FastGene™ Scriptase Ⅱ Master Mix(5X)の特長(日本ジェネティクス株式会社)
本資料で使用されている逆転写キットは、遺伝子の発現定量を目的とするqRT-PCRに特化したMaster Mixタイプとなっており、逆転写 プライマーとしてはランダムプライマーが含まれております。 qRT-PCRによる遺伝子の発現定量では、多検体を処理しなければならないケースが多いため、MasterMixタイプを使用することで、分注 操作の手間を減らすことができます。 また、ランダムプライマーで逆転写を行うため、RNAの立体構造を解く熱変性ステップ(65℃・5 min)を省略し、立体構造の下流にある ターゲット領域が効率的に逆転写されることが期待できます。 これらにより、逆転写反応における操作の簡略化と操作時間の短縮化を図ることができます。 本資料の末にあります『逆転写反応に用いるプライマー選択のポイント』もご参考ください。

検討の背景

ラットの腸間膜脂肪組織から抽出したRNAを用いて発現定量解析を行ってきました。FastGene™ Scriptase Ⅱ cDNA Synthesis(NE-LS63) からcDNAの合成を行いましたが、酵素の添加ステップや、RNAの高次構造を解くステップに対して、若干操作上の手間を感じていました。
今回、qPCR用に特化されたFastGene™ Scriptase Ⅱ Master Mix(5X)(NE-LS64)を使用したところ、必要な試薬類がすでに混合されており、また操作のステップも少ない分、簡便に使用することが出来ました。

実験

未処置のControlラットとSTZ(※)を投与した糖尿病モデルラットを用いた。

A:Control 8 匹
B:STZを投与して12日後
  随時血糖が590 程度の
  糖尿病モデル 7匹

※ STZ:ストレプトゾシン
  膵臓ランゲルハンス島のβ細胞の破壊

RNA抽出: QIAGEN RNeasy(74104)
逆転写反応: FastGene™ Scriptase Ⅱ
       Master Mix(5X)(NE-LS64)
qPCR試薬: LightCycler480用 SYBR Green I
      マスターミックス(04707516001)
qPCR装置: LightCycler480(Roche)
     (05015278001)

サンプルによってRNA 濃度が違うため、400 ng となるように添加した。

実験結果

qPCR結果

● Cq値
ターゲット遺伝子:Adiponectin
リファレンス遺伝子:TF2B

Rat  Cq値   Rat Cq値
Adiponectin TF2B   Adiponectin TF2B
ラットA
Control
A1 26.01 33.87   ラットB
糖尿病モデル
B1 30.72 34.23
A2 23.63 30.80   B2 29.60 33.60
A3 24.76 29.95   B3 27.39 32.82
A4 29.38 36.80   B4 27.64 33.04
A5 27.62 34.04   B5 34.10 39.83
A6 26.16 31.90   B6 25.53 31.70
A7 23.70 30.69   B7 31.62 37.57
A8 23.41 30.76          
 
 
● Adiponectinの相対定量結果
 
糖尿病群の腸間膜脂肪組織におけるAdiponectin のmRNA 発現量が対照群よりも低かった。これまでに使用していた製品でも同様の結果が得られており、相対発現量が正しく測定できたと考えられる。
 
 
 
お客様のコメント
感想としましては、Mixに全て準備されているのでとても楽でした。
今回は60 minインキュベートさせましたが、短時間でも十分反応することが示されているので、今後使用する時には、より作業時間を短縮することができると期待しています。
 
逆転写反応に用いるプライマー選択のポイント(日本ジェネティクス株式会社)
逆転写反応に用いるプライマーは、主にランダムプライマー、oligo dTプライマー、ターゲット特異的プライマー(以下、特異的プライマー) の3 種類があります。
ダウンストリームアプリケーションに合わせて、適切なプライマーを選択してください。  
⇒ 本資料使用の製品であるMaster Mixタイプは、ランダムプライマーが含まれています。  
⇒ ScriptaseⅡは、プライマーを選択できる、酵素のみ(NE-LS53), cDNA合成キット(NE-LS63)もございます。

【各プライマーの特長】
● ランダムプライマー:
ランダムな塩基配列を持った短鎖のプライマー。
例えばランダムヘキサマーの場合、理論上4,096 種類のプライマーが含まれる。反応液に含まれるRNAを様々な位置から網羅的に逆転写できるため、遺伝子の発現定量を目的とする場合に効果的である。この場合、 ポリAテールを持たない原核生物由来のmRNAや、二次構造を持つRNAでも効果的に逆転写することが可能となる。 一方、真核生物由来のmRNAにおいて、ポリAテール側から完全長cDNAをクローニングするような場合には適さない。

● oligo dT プライマー:
ポリA配列にアニーリングするプライマー。(例:真核生物由来のmRNAのポリAテールなど)
このため、主に真核生物由来のmRNAの完全長のcDNA合成に用いる。
また、真核生物の遺伝子の発現定量を目的とする場合に、ランダムプライマーに混合して使用すると、逆転写効率の向上が期待できる。

● 特異的プライマー:
ターゲットのRNA配列に基づいて、設計されたプライマー。
特定の遺伝子のみを検出する場合や、高い特異性が必要な場合に用いる。


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