日本ジェネティクスのアプリケーションノートとは?
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下記データは、食肉加工会社のお客様のご厚意により掲載させていただきました。
背景
カンピロバクター食中毒は、わが国で発生している細菌性食中毒の中で、近年、発生件数が最も多く、年間およそ300件、2,000人程度の患者が報告されている。そのため、こちらの食肉加工会社では、定期的にカンピロバクターの検査を実施している。
カンピロバクターの検出方法は、通常培養法で行われるが、判定結果が出るまでおよそ1週間から10日かかる。
一方PCR法を用いれば、約20分という速さで判定結果を得ることが可能である。
目的
モバイルリアルタイムPCR装置を用いた、カンピロバクターの迅速検出法の正確性を、従来の培養法と比較する。
試験方法
通常の検査では、生肉サンプルを用いて行うが、今回はカンピロバクター汚染率の極めて高い鳥盲腸便を用いて、PCR法および培養法で検査を行った。
サンプル採取について
内臓一式(食道から総排泄口まで)を採材した。盲腸の先端を火炎滅菌した後に、滅菌したはさみで先端を切り落とし、切り落とした部分から盲腸便をシャーレに取り出した。
取り出した盲腸便をPBSで1,000倍希釈し、これをPCR法、培養法の各試験の検体とした。
PCR法
使用機器 :モバイル型リアルタイムPCR装置(PicoGene® PCR1100)
試薬:カンピロバクター属菌検出用キット(準備中)、日本板硝子
(1日目)
検体5 μLを、カンピロバクター属菌検出用キットのチューブに添加
(キットには、試験に必要な酵素、プライマー、プローブなどが混合されている)
↓
検体を入れたキットのチューブから、ピペットで混合液を18 μL吸い取り、
測定用チップへ注入
↓
測定用チップをPCR1100 にセットし、測定を実施
<PCR測定条件>
※試薬調製に約5分、判定結果が出るまで約20分
培養法
(1日目)
前培養:プレストン培地 42℃ 24時間 微好気培養
↓
(2日目)
選択増菌培地:バツラー寒天培地 42℃ 48時間 微好気培養
↓
(4日目)
典型的なコロニーを検鏡し、らせん状桿菌をカンピロバクター推定陽性とする
純培養:血液寒天培地 42℃ 48時間 微好気培養
↓
(6日目以降)
確認試験:
① オキシダーゼ試験、② カタラーゼ試験、③ 好気培養、
④ 25℃発育試験、⑤ 馬尿酸塩加水分解試験を実施
①(+)、②(+)、③(-)、④(-)でカンピロバクター陽性
⑤(+)で、C.jejuni、(-)で、C.Coli と型判別を実施
※判定結果が出るまで約1週間
結果
5 検体の検査結果(PCR法と培養法)
PCR法 | 培養法 | |
---|---|---|
検体① | + | + |
検体② | + | + |
検体③ | + | + |
検体④ | + | + |
検体⑤ | + | + |
PCR法
培養法
プレストン培地で培養後、バツラー選択増菌培地で培養
• 今回の試験では、PCR法と培養法で同様の結果が得られた(全5 検体)。
• 今後も継続的な検討を行い、PCR法と従来の培養法とで同様の結果が得られるか検討が必要
資料:モバイルリアルタイムPCR装置を用いたカンピロバクターの迅速検出
生肉サンプルの場合
● 用意するもの
機器:
モバイル型リアルタイムPCR装置(PicoGene®PCR1100)
測定用チップ MCP1100
試薬:
カンピロバクター属菌検出用キット(準備中)、日本板硝子
その他:
解析用PC(WINDOWS OS)
ストマッカー一式
生肉を小片化するハサミ、またはナイフ、生理食塩水、ピペット、チップ(すべて滅菌済み)
サンプルの前処理
生肉サンプル(25 g)を小片に刻む
↓
小片化したサンプル(25 g)を、滅菌生理食塩水(225 mL)に入れ、ストマッカーで処理を行う
↓
ストマッカー処理液から5 μLをピペットで吸い出し、測定用サンプルとする
*サンプル採取の際に、固形物を吸わないように注意
盲腸便の場合
● 用意するもの
機器:
モバイル型リアルタイムPCR装置(PicoGene®PCR1100)
測定用チップ MCP1100
試薬:
カンピロバクター属菌検出用キット(準備中)、日本板硝子
その他:
解析用PC(WINDOWS OS)
はさみ、シャーレ、ピペット、チップ、PBS(すべて滅菌済み)
サンプルの前処理
内臓一式(食道から総排泄口まで)を採材
↓
盲腸の先端を火炎滅菌した後に、滅菌したはさみで先端を切り落とし、切り落とした部分から盲腸便をシャーレに取り出す
↓
取り出した盲腸便をPBSで1,000倍希釈し、5 μLをピペットで吸い出し、測定用サンプルとする
測定サンプルの調製
検体5 μLを、カンピロバクター属菌検出用キットのチューブに添加
(キットには、試験に必要な酵素、プライマー、プローブなどが混合されている)
↓
検体を入れたキットのチューブから、ピペットで混合液を18 μL吸い取り、測定用チップへ注入
PCR1100の測定
測定用チップをPCR1100 にセットし、プログラムを選び測定を実施
<PCR測定条件>
↓
測定画面に「測定結果」が表示されたら完了
(注意)PCR1100 にて送液エラーが出た場合
測定サンプルを5倍希釈し、再度実施
※5倍希釈方法:5 μLのサンプルに、水(PCRグレード)を20 μL加える
この記事で紹介した製品
- こちらのアプリケーションノートのPDFダウンロード : こちら
- 製品情報詳細ページ: モバイル リアルタイムPCR装置 PicoGene® PCR1100
- アプリケーションノート検索ページ(型番・キーワード・アプリケーションから検索可能)
今回試験した盲腸便の検体では、濁りがあり100倍希釈まではエラーが出て測定ができませんでしたが、1,000倍希釈する事で測定が可能になりました。
検出感度が良いので、検体を1,000倍希釈しても培養法と同様に陽性判定を確認できました。1,000倍希釈した検体5 μLの中にどのくらいの菌数がいて検出できたかは、今回の試験では分かりませんでしたが、検出に必要な菌数が分かれば、今後の色々な試験の参考になると感じました。