【お客様事例】ibidiポリマーを利用した初代培養神経細胞の観察事例

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アプリケーションノート 2021<07>
製品名:ibidi µ-Slide 8 Well high ibiTreat(Cat.No.ib80806)
メーカー名:ibidi社

下記のデータは、東京大学 大学院薬学系研究科 薬品作用学教室 森川 勝太 様/河野 玲奈 様/小山 隆太 准教授/池谷 裕二 教授より情報をご提供いただきました。

概要

神経細胞は、シナプスを介して情報伝達を行っている。シナプスは、数マイクロメートル程度の微細構造であるため、顕微鏡観察を行う際、低ノイズ・高解像度での画像取得が求められる。
今回、ガラスに代わる顕微鏡観察用カバースリップ素材である“ibidiポリマー”の性能を検証するために、マウス初代培養神経細胞の画像を取得し、ガラスボトムディッシュと比較した。画像取得には、Nikon共焦点顕微鏡A1HD25を使用し、ライブセルイメージングとPFA固定(免疫蛍光染色)したサンプルを観察した。なお、より精細な観察を実現するために、画像にはデコンボリューション法による画像処理を加えている。
この結果、ibidiポリマーでも、ガラスボトムディッシュと遜色ないクオリティーの画像が取得できた。このように、ibidiポリマーは、神経細胞観察においても、その性能が発揮できることがわかった。

方法

〈比較対象:使用ディッシュ〉
・μ-Slide 8 Well high ibiTreat
・glass bottom dish(IWAKI ガラスベースディッシュ 3911035, #110606)

〈コーティング〉
Poly-D Lysine(Sigma Aldrich, #P6407)

〈サンプル〉
マウス初代培養神経細胞
実験①
マウス初代培養神経細胞に、アデノ随伴ウイルス(AAV2retro-hSyn-Cre, AAVdj-EF1-FLEX tdTomato)を用いて tdTomato を発現させ、ライブセルイメージングで画像を取得した*1
実験②
①の後に、PFAで固定後、Gephyrinの免疫染色とDAPI染色を行い観察した*2
*1,2 取得した画像に対し、デコンボリューション処理を行っている。

〈抗体情報〉
Anti-Gephyrin(Synaptic systems, #147002):抑制性のポストシナプス局在タンパク質
Anti-VGlut1(Synaptic systems, #135304):興奮性のプレシナプス局在タンパク質
Anti-PSD95(Frontier Institute, #PSD95 Rb Af1720):興奮性のポストシナプス局在タンパク質

〈試薬〉
DAPI(Sigma Aldrich, #D9542)

〈顕微鏡〉
偏斜撮影:KEYENCE BZ-X710
共焦点蛍光顕微鏡観察:Nikon A1HD25
対物レンズ:CFI プランアポクロマート VC 20X
      CFI SR HP プランアポクロマート Lambda S 100XC Sil
      CFI アポクロマート TIRF 100XC Oil

結果 ①:ライブセルイメージング観察結果

・Mouse primary culture neuron(DIV7)
・使用レンズ:CFI プランアポクロマート VC 20X
       CFI SR HP プランアポクロマート Lambda S 100XC Sil

補足:ibidi polymer底面接着について

・Mouse primary culture neuron(DIV1)
・使用顕微鏡:KEYENCE BZ-X710

今回、初代培養神経細胞をibidiポリマーに直接播種することも試みたが接着しなかった。このため、ibidiポリマーに対し、Poly-D-Lysineコートを施したのちに細胞を播種して観察に使用した。
このように、ibidiポリマーはガラススライド同様に、コーティングを施し使用することも可能である。
コーティング方法の詳細はアプリケーションノート「Application Note 08 ibidi μ-Slides および μ-Dishes のコーティング手順」をご参照ください。

結果 ②:免疫染色結果

 

結果

ドット状に観察されるポストシナプスが明瞭に観察できた(本実験では、ibidi polymerにおいて特に明瞭であった)。

解説

この図では、tdTomato(青色)として観察される神経細胞の樹状突起に沿って、興奮性ポストシナプスマーカー PSD95(赤色)のシグナルが認められる。さらに、拡大図では、同じく興奮性プレシナプスマーカー(緑色)であるVGLUT1のシグナルが隣接した部分に認められるため、形成された興奮性シナプスが観察できていることを示唆している。

補足:Nikon A1HD25 デコンボリューションの効果

結論

μ-Slide 8 Well high ibiTreatを用いて神経細胞を観察した結果、ibidiポリマー上で高精細な画像が取得でき、神経細胞の詳細な部分まで観察することができた。

お客様のコメント
これまで使用していたガラスボトムディッシュと比較しても同等クオリティの画像を取得することができ満足しています。
また、これまで、1サンプルに対して1つのディッシュを用いていましたが、ibidiマイクロスライドを用いると最大8サンプルを同時に培養・撮影することができるため、作業効率が上がったことや、インキュベーター内のスペース削減に繋がったことも大変気に入りました。
NGC担当者のコメント

森川様の研究室では、イメージング用に非常に多くのディッシュを扱われており、インキュベーター内は、日夜、大量のディッシュで埋め尽くされております(写真参照)。
今回、ibidiのマイクロスライドを利用して神経細胞の画質にフォーカスし、評価を行っていただきましたが、マイクロスライドの利用は画質の面だけでなく、インキュベーターのスペース削減という意味でもメリットを感じていただけたようです。

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