第四十回 新型コロナウイルス感染症対策の陰に『007』

東大名誉教授・塩田邦郎先生コラム「エピジェネティクスの交差点」
塩田 邦郎 先生のご紹介

東京大学名誉教授

1979年より製薬会社中央研究所、1987年より現在まで東京大学(農学生命科学研究科)、2016年から2020年まで早稲田大学にて研究されてきた。素朴な生物学の影を残した時代から、全生物のゲノム情報を含む生命科学の基礎と産業応用の飛躍の時代になった。本コラムでは大学や企業での経験も交えながら、専門分野のエピジェネティクスを含めた自由な展開をお願いしました。


第四十回 新型コロナウイルス感染症対策の陰に『007』

 

 このところ(2021年)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)第5波の感染者数減少が続いている。東京都でも感染者数はこの1週間は1日50人を下回っているのだ。ワクチン接種が行き届いた、マスク着用や換気の徹底、手洗いやうがいなど衛生上の徹底、など様々な意見が取りざたされるが、専門家も結論を出せていない。感染しやすい人はすでに感染した結果なのではないか?との意見もあるが、劇的な感染者数の減少の理由は不明のままだ。

 映画『007』は英国秘密諜報員ジェームズ・ボンドが活躍する約60年も続いてきた長寿シリーズで、最新作が25作目の『No Time To Die』、ボンド役はショーン・コネリーから代々変わり、この数回はダニエル・クレイグに落ち着いている。

 私が最初に観た『007』はシリーズ第4作『サンダーボール作戦』だった。アメリカによる月への有人宇宙飛行計画(1961-1972)で、アポロ11号で初めて人類が月に到達したのが1969年だから、『007』シリーズはソ連とアメリカの宇宙競争や核軍拡競争が背景にあった。第2作「ロシアより愛をこめて」では、英米の自由主義陣営とロシアなど共産主義国家間の隙をついて巨大犯罪組織スペクターの暗躍する中で、英国側のボンドとロシア側のボンドガール(ダニエラ・ビアンキ)が人気となった。

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