第七十六回 ジャック・オー・ランタン歯の起源

東大名誉教授・塩田邦郎先生コラム「エピジェネティクスの交差点」
塩田 邦郎 先生のご紹介

塩田 邦郎(しおた・くにお)
東京大学名誉教授
1950年鹿児島県生まれ。博士(農学)。79年東京大学大学院農学系研究科獣医学専攻博士課程修了後、武田薬品工業中央研究所、87年より東京大学農学生命科学研究科獣医学専攻生理学および同応用動物科学専攻細胞生化学助教授、98年より同細胞生化学教授。
2016年早稲田大学理工学研究院総合研究所上級研究員。哺乳類の基礎研究に長く携わり、専門分野のエピジェネティクスを中心に、生命科学の基礎研究と産業応用に向けた実学研究に力を注ぐ。2018年より本サイトにて、大学や企業での経験を交え、ジェネティクスとエピジェネティクスに関連した話題のコラムを綴っている。


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第七十六回 ジャック・オー・ランタン歯の起源

 気の早い商店街では9月中旬頃から、歯を剥き出した赤いカボチャのランタン(Jack-o’-lantern)を見かける。カボチャは別として(編集部注:「第三十九回 カボチャ嫌いの言い分」)、秋には美味しい食べ物が、と書き出したいのだが、しばらく前から奥歯が痛い。歯茎の周りも炎症を起こしているから食べ物が当たるだけで痛く、食欲に結びつかない。たかだか歯が痛いだけで季節の変化も食事の楽しみも関係ない別の世界に入ってしまう。人間とはなんと情けない生き物だろう。

 私たち人類は乳歯が抜け永久歯に生え変わると、その後はもう生えてくることはない。一生に1回しか歯が生え変わらない、一換歯性動物(あるいは二生歯性動物、diphyodonts)である。歯が抜けた動物は野生の世界では致命的で、他の動物の餌になるしかない。人間の場合は餌にすらならない。

 随分と前の話だが、ある歯科大学のセミナーで「昔から歯科医は、歯を削り埋める治療が主体だ。歯を再生できないのか?」と若手の歯科医にハッパをかけ、ひんしゅくを買ったことがある。削って埋めるだけではない、人工素材のインプラント治療も始まっていた。確かに医療現場は頑張っていたのだ。いや、削って埋めるだけの治療でどれほどたくさんの人が助かっていることか。

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