【お客様事例】牛乳を材料にしたダイレクトPCR

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アプリケーションノート 2021<19>
製品名:KAPA3G Plant PCR Kits(Cat.No. KK7251)
メーカー名:KAPA BIOSYSTEMS

下記データは、麻布大学 獣医学部 動物工学 田中 和明 様のご厚意により掲載させていただきました。

概要

日本で飼育されている乳牛の大部分(約99%)はホルスタイン種です。また、乳牛全体に占める割合は1%程度ではありますが、2番目に多い乳用品種としてジャージー種が利用されています。言い換えると、国産牛乳は、品種の表示が無くても、主にホルスタイン種が生産したものになります。これに対して、ジャージー種の乳のみを使ったと品種表示されている牛乳(ジャージー牛乳)は、品種表示の無い牛乳よりも高価格帯の商品として販売されています。このため、ホルスタイン種由来の乳を含む牛乳と、ジャージー種のみで生産した牛乳を区別できる鑑定法を確立することは、ジャージー牛乳のブランド価値を維持するために重要となります。牛乳の中には、乳を生産したウシのゲノムDNAが含まれているので、これを用いて品種鑑定をする方法が開発されています。私たちは、黒白斑(ED)の個体の頻度が高いホルスタイン種と、褐色(E)を基本色とするジャージー種の毛色の決定因子であるMC1R遺伝子の断片をPCR増幅し、ダイレクトシークエンスおよび制限酵素切断断片長多型を用いて、遺伝子型判定を行っています。
私たちは、これまで、牛乳からのDNA抽出に市販の全血用DNA抽出キット(所要時間90分程度)を用いていました。抽出の過程を省略できればより効率的な結果方法になるのではないかと期待して、強いPCR阻害耐性を有するKAPA3G Plant PCR Kitsを用いたダイレクトPCRを検討しました。
Tanaka K., Amano M., Fujiki M., Takizawa T.(2021),“Discrimination between Holstein derived milk and pure Jersey dairy products via analysis of the MC1R gene.”, Food Science and Technology Research, 27(3), 381-387, 2021

実験内容

サンプル条件
  1. 滅菌蒸留水で2倍に希釈した牛乳
  2. 滅菌蒸留水で20倍に希釈した牛乳
  3. 牛乳から抽出したDNA(QuickGene DNA whole blood kit S;FUJIFILM Wako Pure Chemical Corporation)
  4. ネガティブコントロール(精製水)
KAPA3G Plant Kit 条件
  • 反応試験(PCRミックス 1反応当たり)
    2X KAPA Plant PCR Buffer 10.00 μL
    100 μM Forward Primer 0.10 μL
    100 μM Reverse Primer 0.10 μL
    KAPA3G Plant DNA Polymerase 0.16 μL
    H2O 8.64 μL
    Template(試料①~④) 1.00 μL
    Total 20.00 μL
  • プライマー配列
    ターゲット ウシ MC1R遺伝子, 増幅サイズ155 bp  
    F202(5’-AACCTGCACTCCCCCATGTACTACT-3’)
    R356(5’-ACATTGTCCAGCTGCTGCACCACGG-3’)
  • PCR条件

結果

2%アガロースゲル TAE 緩衝液 Agarose 1200 Standard Type(Code No.PH 108: ピーエイチジャパン)
Mupid®-2plus(泳動時間:40分、電圧100 V)エチジウムブロマイド染色

まとめ
キット精製したDNAと遜色ないPCR産物を得ることができた。
お客様のコメント
クルードサンプルを用いることができるダイレクトPCR用酵素の中には、TM値が比較的高いプライマーを用いて、2ステップPCR(94℃~98℃→68℃ サイクル)を推奨している製品があります。我々の実験系では、3ステップPCR(94℃~98℃→55℃~60℃→72℃)で行っていたため、2ステップPCRタイプの酵素を導入するには、PCR条件やプライマー配列の再検討が必要でした。これに対して、KAPA 3GプラントPCR キットは、当研究室で汎用のPCR酵素KAPA Taq Extra PCR Kit(Cat.No. KK3009)で用いている温度条件をそのまま使用する事ができました。今回の検証により、精製の手間を省略した簡便な品種鑑定を行えることが確認できました。本製品のようなダイレクトPCRにも使用できる汎用性の高いPCR酵素は有用であると考えます。
編集後記(日本ジェネティクス株式会社より)
田中先生より、本手法の課題点はまだ残されており、牛乳を用いたダイレクトPCRは、簡便ではあるもののPCR溶液に牛乳由来の夾雑物を多く含むことが、下流のアプリケーションに影響を与える可能性があるとコメントいただきました。例えば、食品検査で広く使われているリアルタイムPCR法を用いた遺伝型判定においては、夾雑物による蛍光がノイズになるなどが考えられます。そこで、田中先生は、PCR増幅したDNA断片に対して制限酵素処理やサンガーシークエンスを行う場合には、カラムを用いたPCR産物のクリーンアップをFastGene Gel/PCR Extraction kit(Cat.No. FG-91202, FG-91302)にて行い、使用をされているとのことです。上記のような課題はあるものの、本資料の結果は、KAPA 3GプラントPCR酵素が強い阻害耐性を持ち、ダイレクトPCRで汎用性が高い酵素であることを示す有用なデータとなっています。
ダイレクトPCRを用いた簡便なDNA検出方法の確立を目指す方にとって、本アプリケーションノートが有益な情報となることを期待しております。

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