第七十七回 遅い秋のサツマイモ

東大名誉教授・塩田邦郎先生コラム「エピジェネティクスの交差点」
塩田 邦郎 先生のご紹介

塩田 邦郎(しおた・くにお)
東京大学名誉教授
1950年鹿児島県生まれ。博士(農学)。79年東京大学大学院農学系研究科獣医学専攻博士課程修了後、武田薬品工業中央研究所、87年より東京大学農学生命科学研究科獣医学専攻生理学および同応用動物科学専攻細胞生化学助教授、98年より同細胞生化学教授。
2016年早稲田大学理工学研究院総合研究所上級研究員。哺乳類の基礎研究に長く携わり、専門分野のエピジェネティクスを中心に、生命科学の基礎研究と産業応用に向けた実学研究に力を注ぐ。2018年より本サイトにて、大学や企業での経験を交え、ジェネティクスとエピジェネティクスに関連した話題のコラムを綴っている。

第七十七回 遅い秋のサツマイモ

 古くからの友を訪ねて宮崎県の佐土原に出かけた。昨年はコスモスに囲まれた西都原古墳群に連れて行ってもらったことを機内で思い出しながらの約1時間半の旅、宮崎空港には友が迎えにきてくれていた。夕食に宮崎の山海の幸を楽しみながら、話題は共に通った鹿児島の小学校時代まで遡った。

 帰りの便は翌日の昼過ぎの予定であった。久しぶりに海辺に出かけることも考えていたが、あいにくの雨、友が県立美術館を案内してくれた。館の入り口ではフランス・ポスター展を宣伝するマティス作の大型ポスターが目についたが、友の後をついて別の部屋に入ると、壁いっぱいに絵が展示されていた。あ、吉田君の絵? そんなはずはないが、昨夜も話題になった絵が得意だった、吉田君の顔が浮かんだ。

 県内の13の特別支援学校で学ぶ幼児・児童・生徒の作品が集められ、第22回宮崎県立特別支援学校アート展が開催されていたのだ。花、動物、魚、恐竜、建物、街、雲、山、海が、南国の光を浴びた強烈な個性、影の濃さ、鮮やかな色彩などが、緻密な描写で迫ってくる。緊張した個々の作品がつくり出す部屋全体の穏やかな雰囲気。先のコラム「第54回 穏やかな午後の電車内」の女児と母親の手話による会話の風景や、「第72回 黄色いタイムカプセル」のパール・バックの知的障害を持つ娘キャロラインがもたらす世界にも通じる。

質問してみる!

「?」と思ったらすぐ解決。
どんな小さなことでもお気軽に。
ご意見・ご感想もお待ちしています。

WEB会員

記事の更新情報を受け取りたい方はコチラ

WEB会員 登録フォームへ

GeneF@N とは?